東京高等裁判所 昭和55年(う)第640号 傷害致死事件 昭和56年1
月13日判決
1 ポイントは何か?
正当防衛の刑法と盗犯等防止法の違い
2 何があったか?
被告人Aは、愛人C宅で寝ていたところを、泥酔状態の男Bが室内に侵入し
、Aが「帰れ」と言っても退去せず、Bから暴力を振るわれたので、Aは防衛
のために台所にあった刃物を利き腕の左手で構えたところ、BがAに向って突
進し、Aが構えた刃物がBの右鎖骨下部に刺さり、Bは出血及びその吸引性窒
息により死亡した。
3 裁判所は何を認めたか?
Aの弁護人は、Aが刃物を突き出していないこと、仮に突き出したとしても正
当防衛であると主張した。原審は、Aに傷害致死罪で有罪判決を下したが、東
京高等裁判所は、これを破棄し無罪判決を下した。
刑法の正当防衛は、「やむを得ずにした行為」であることを被告人側が立証し
なければならないが、盗犯等防止法の正当防衛は、「やむを得ずにした行為」
であるとみなされる。
4 コメント
もちろん生命、身体または貞操に対する現在の危険を排除するために必要な行
為であることの立証は必要だが、その立証の程度も、ある程度緩和されるだろ
う。判断が難しいこともあろう。