最高裁判所第一小法廷 昭和22(れ)222 食糧管理法違反、物価統制令違反
昭和23年4月8日判決(棄却) 原審広島高等裁判所
1 ポイントは何か?
手段と目的の関係にある犯罪の刑の選択幅
2 何があったか?
被告人Yは、食糧管理法違反行為及び物価等統制令違反の罪を犯した。
検察官は、両犯罪で起訴した。
3 裁判は何を認めたか?
裁判所は、両犯罪は手段と目的の関係にある牽連犯(刑法54条後段)である
とし、両犯罪は食糧管理法違反の法定刑が10年以下の懲役または5万円以下
の罰金であり、物価等政令違反の法定刑が10年以下の懲役または10万円以
下の罰金であり、共に懲役と罰金の選択又は併科である。
原審は、両罪の懲役刑の長期が同じであるから犯情により前者の刑を重しとし
てこれにより懲役刑と罰金刑を併科した。
判決文上、懲役期間及び罰金額は明らかでない。
それに対して、弁護人は懲役と罰金の併科を不当と主張して上告した。
最高裁は、このような場合の犯情の比較方法について検討したが、罰金につい
てはどちらの犯罪の罰金刑に依るかを明言しているわけでもない。そして、弁
護人の主張は量刑不当の主張であり、上告理由にはならないとして上告を棄却
した。
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牽連犯は、手段目的の関係にある犯罪で、両者の刑を比較して重い方の刑を科
するが、いずれも懲役刑と罰金刑の選択刑又は併科刑と規定されている場合、
懲役刑と罰金刑のそれぞれの長期ないし多額を比較して重い方を科することが
できるとすることで、選択刑にせよ処断系にせよ処断刑の幅が広がる方が望ま
しいとと考える。
そして、弁護人の上告理由が重い方の罰金刑を選択することで、罰金刑のみ選
択して罰金蚤の判決を下すよう主張したのだとしたら、単なる量刑不当の主張
ではなく、法令解釈の盲点を突くものであったと言えよう。