【刑事事件:戦後インフレーションの時代、企業が従業員の社会保険料を納付できなかった事件】

昭和28(あ)5469  失業保険法違反
昭和33年7月10日  最高裁判所第一小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所

1 ポイントは何か?


無罪の理由。

2 何があったか?

 A社は、従業員の給料から失業保険分を控除したが、代理人Bに交付するこ
とができず、Bは納付できなかった。
 戦後インフレーション、材料費と製品価格のアンバランス、過剰人員による
人件費増大、労働者のストライキなどの事情からA社には、Bに失業保険分と
して交付する金がなく、Bもとりあえず流用できる金もなかった。
 検察官はA社とA社の代理人Bを失業保険法違反で起訴した。

3 裁判所は何を認めたか?

 A及びBは無罪。
 高等裁判所は、期待可能性がないとした。
 最高裁は、A社からBに納付する金が送られてこなかったので構成要件該当
性がないとした。Bが無罪である以上、A社も無罪とした。結論が無罪である
ことは高等裁判所と異ならない。

4 コメント

昭和20年代の戦後インフレーションの時代は社会保険料すら納められない会
社がたくさんあったことだろう。政治の問題でもあり、AやBを無罪としたの
は妥当である。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人