【不正競争事件:取締役をやめて別の会社を設立した事件】

大阪地方裁判所令和5(ワ)12720  不正競争行為差止等請求事件  令和7年4
月24日判決

1 ポイントは何か?


立証

2 何があったか?


A社は、A社製品の製造販売、建方工事を専業としている。
Bは、A社の元取締役であるが、退任後にC社を設立した。
Bは、令和4年8月29日、A社を退任するとき、A社に企業秘密を守る等の誓
約書を差し入れ、A社と取締役業務の引継業務委託契約及び向こう4年間のA社
の請負人の指導等を行う顧問契約を締結し、A社から退職慰労金、顧問料等を
受け取った。
A社は、令和5年4月27日、B及びC社に対し、A社従業員の勧誘・引き抜き
等が債務不履行、不正競争、不法行為に当り、A社製品と同一又は類似商品の製
造等が不正競争に当ると警告し、支給金の返還、引抜禁止、A社表示製品の廃
棄等を求めた。
A社が裁判を提起し、B及びC社は、これを争った。

3 裁判所は何を認めたか?


A社の請求を棄却した。
⑴A社情報の取得が不正競争に当るか 不正競争防止法2条6項の「秘密として
管理されている」と言えるためには、当該情報が営業秘密であることが認識で
きるような措置が講じられ、当該情報にアクセスできる者が限定されているな
ど、当該情報に接した者が認識しうる程度に秘密として管理していることを要
する。しかし、A社製品情報、取引情報、原価情報はこのような管理がなされ
ているとはいえないので営業秘密該当性がなく、B及びC社によるその取得が不
正競争に当るとはいえない。
⑵「Kフレーム」等の原告各表示の使用が不正競争に当たるか 同法同条1項1
号及び2号の「商品等表示」とは、商品又は営業を示すものとして出所表示機
能を有するものに限られる。A社の商品名として使用されている「K型フレー
ム」ないし「Kフレーム」はありふれた用語から構成されており、第三者も使用
しているので、商品又は営業の出所を表示するものとはいえず、C社による使用
が不正競争に当るとはいえない。
⑶支給金返還事由があるか Bは誓約書、業務委託契約、顧問契約に違反して
いないので、支給金返還事由はない。
⑷一般不法行為が成立するか B及びC社にA社従業員の勧誘・引抜の事実はな
く、A社の営業情報は要保護性、保護法益を欠き、BまたはC社によるそれらの
取得方法が社会的相当性を欠くともいえず、C社のM社からの受注は自由競争
の範囲内であるから、これらによって一般不法行為が成立するとはいえない。
⑸債務不履行が成立するか B及びC社に勧誘避止義務違反、秘密保護義務違反
はなく、債務不履行が成立するとはいえない。

4 コメント


とても微妙な問題であるが、きっぱりとした裁判所の判断であり、企業を守り
営業を守る参考にもなる。

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