最高裁判所第一小法廷 令和5(受)606 事務管理費用償還等請求事件 令和7年7月14日判決(原審、名古屋高等裁判所金沢支部)
1 ポイントは何か?
産業廃棄物処分場の汚染処理の費用の分担。
2 何があったか?
産業廃棄物最終処分場を設置するA市が、B株式会社に委託して同処分場に過剰に産業廃棄物を埋め立てたC市ら市町村やD一部事務組合(中小自治体が参加する一部事務組合)らに対し、同処分場からの浸出液や汚染地下水の流出を防止する施設等の設置費用をC市らに請求した。
債権の発生原因として、契約と不法行為が代表的であるが、他に事務管理と不当利得がある。本件は、事務管理費用償還請求事件である。
C市らやD一部事務組らは、A市の設置した処分場の管理まで事務処理責任を負わないと反論した。
3 裁判所は何を認めたか?
名古屋高等裁判所は、C市らやD一部事務組合らが法律上A市の処分場の管理までもその事務として処理すべきことを定めた法律はないとして、A市の敗訴とした。
最高裁判所は、C市らやD一部事務組合らが産業廃棄物処理に関して負う産業廃棄物処理法上の環境保全義務はB社に委託してA市の処分場に埋め立てた以上。同処分場の環境保全にも及ぶとして、名古屋高裁の判決を破棄し、差し戻した。
4 コメント
C市らやD一部事務組合らが法律上A市の処分場の管理についても事務処理責任を負うとして、A市のC市やD一部事務組合に管理費用を求償する道を開いたものとして、重要な判例である。弁護士は、地方自治体がどのように日本全土の環境保全を分担しているかということに思いを馳せなければならない。