【労働契約: 固定残業代を超える残業手当の請求が認められた事件】

未払賃金等請求事件

大阪地裁堺支部令和元年(ワ)第1049号、

令和3年12月27日判決

(労働判例1267号64頁)

1 ポイントは何か?

  • 固定残業代。
  • 労働基準法上の労働時間。
  • 労働基準法114条に基づく付加金。
  • 遅延損害金。
  • 除斥期間、消滅時効。

2 何があったか?

Y会社は、就業規則を定めているが、賃金規定はなく、各労働者の労働契約書も作成していなかった。

XがYに採用されるとき、求人広告には、毎月36時間分の、みなし残業代金(固定残業代)が給料に含まれている旨の説明が書いてあり、採用面接の時もモニターで説明されていたようである。給料明細に「外勤手当」と記載されていた。それが、毎月36時間分の、みなし残業代金(固定残業代)の手当であった。

Xは、Yに対して、外勤手当も残業代金の基礎賃金に算入されるという前提で、基礎賃金額を計算し、そして、実際の出勤時刻から所定の勤務開始時刻まで、及び、所定の勤務終了時刻から実際の退出時刻までの間の作業も残業であるとして、未払割増賃金395万2938円、及び、付加金338万0729円、並びに、これらに対する遅延損害金を請求する訴訟を提起した。

なお、遅延損害金の率については、次の通り。未払割増賃金に対する遅延損害金についてはXがY社を退職した平成31年3月31日まで改正前商事法定利率年6%、その翌日から支払済まで賃金支払確保法に基づく14.6%。付加金に対する遅延損害金については本判決確定後支払済まで平成29年改正前民法所定の年5%。

3 裁判所は何を認めたか?

Xは一部勝訴。

裁判所は、未払割増賃金7万5576円、及び、付加金5万7055円、並びに、これらに対する遅延損害金の支払のみを認めた。

Xの訴訟費用負担割合は50分の49であった。

裁判所は、Yの、外勤手当についての求人広告やモニターによる説明で、みなし残業代金(固定残業代)の要件を満たしていると判断し、これを基礎賃金額から控除して割増賃金時給額を計算した。

そして、実際の出勤時刻から所定の勤務開始時刻まで、及び、所定の勤務終了時刻から実際の退出時刻までの間の作業については、その一部を除いて、YがXに業務につくことを指示したとはいえないとして時間外労働時間とは認めなかった。

認められた時間外労働時間に、基礎賃金の時給額を乗じて、みなし残業代金を差し引き、未払割増賃金が計算された。

付加金の発生後5年を経過した部分は、除斥期間により請求を認めなかった。

4 コメント

Xは、みなし残業代金(固定残業代)が予定した36時間を超える残業時間についての残業代金の請求を認められた。

外勤手当が、みなし残業代金(固定残業代)であるとすれば、残業代の基礎賃金とは認められなかったのはやむを得ない。

しかし、定時以前の出勤、定時以後の退社が、サービス労働になっている現実が認められなかったことは残念であろう。

ところで、みなし残業代金(固定残業代)が労働契約書、就業規則、賃金規定等の正式文書に記載していなくても、求人広告やモニターでの説明で十分とするのは、いかがなものかと思う。使用者の労働者に対する明確な説明責任を課すべきではなかろうか。逆に、使用者も、労働者に誤解のないように交付文書の形式で説明責任を尽くすよう心掛けるべきである。

わが国の契約は、原則として口頭での締結も可能である。しかし、金銭に関することは、きちんと文書化していくという姿勢が必要だろう。

労働契約法も、労働契約を文書で締結することは義務付けてはいない。この点、法改正があってもよいのではないかと思われる。

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