1 ポイントは何か?
- 裁判所が命じた判決による強制執行が認められないことがあり得るのか。
2 何があったか?
- 裁判所が漁業者の請求による諫早干拓排水門の開門を命ずる判決を下し、その判決が確定した。
- 漁業者が、確定判決に基づいて強制執行を申立てた。
- 排水門を管理する国が、強制執行に対する請求異議を負申立てた。
3 裁判所は何を認めたか?
- 佐賀地裁は、漁業者の強制執行を認めた。
- 国は、福岡高裁に控訴した。
- 福岡高裁は、国の主張を認め、佐賀地裁を破棄し、開門を命ずる確定判決の基準日である口頭弁論終結後の事情に基づき、強制執行が権利濫用ないし信義則違反となり、許されないとの判決を下した。
- 漁業権侵害の程度が、開門を命ずる確定判決以降に、予想外に漁獲高の改善が見られたこと等が理由である。
4 コメント
確定判決に基づく強制執行が許されないという事例は珍しい。けれども、こういう事例が出てきた以上、強制執行は赦されるか否かについて、個別に一応検討する必要があることになる。
以上
請求異議控訴事件
福岡高等裁判所令和4年3月25日(破棄自判)
原審佐賀地方裁判所
(裁判所HP、裁判例検索)
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/162/091162_hanrei.pdf