1 ポイントは何か?
行政処分権者の裁量権。
2 何があったか?
⑴ 氷見市の消防職員Xが氷見市消防長A・F、上司B・E・G、部下C・D等に対し数々の暴言、暴行等を行った。
⑵ 消防長はXに地方公務員法29条1項1号に基づき停職2月の懲戒処分を課した(第1処分)。
⑶ Xは氷見市公平委員会に審査請求をした。
⑷ Xは同僚H、部下C等に処分を軽くする行動をとるよう強く働きかけた。
⑸ 消防長はXに地方公務員法29条1項1号に基づき全体の奉仕者たるに相応しくないとして停職6月の懲戒処分を課した(第2処分)。
⑹ Xは、裁判所に対し、氷見市を被告とし、氷見市長を代表者兼処分行政庁として、本件各処分の取消を求めた。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 原審の名古屋高裁金沢支部は、第1処分は適法としてその取消請求を棄却すべきものとし、第2処分は裁量権の範囲を逸脱し又はこれを乱用した違法なものであるとして取消すべきものとした。
⑵ 氷見市が上告し、上告理由申立て理由書は、最高裁昭和52年12月20日第三小法廷判決(民集21巻7号1101頁)と相反する判断をしており、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があると主張した。裁量権が与えられている以上は、裁量権の範囲の逸脱又は濫用による違法があるかを社会通念に従って判断すべきという。
⑶ 最高裁判所は、上告人の主張を受入れ、消防長の判断は懲戒権の範囲の逸脱又はこれを濫用したものには当たらないとし、原審の判決を破棄し、名古屋高裁に差し戻した。
4 コメント
裁判所は、行政庁に懲戒処分の裁量権が与えられている以上、行政庁が非違行為者に対しいかなる懲戒処分をすべきかを直接判断する立場にはなく、社会観念から見て裁量権の範囲の逸脱があったか又は濫用があったかを判断する立場にある。
この微妙な差異を考えなければならない。
以上
懲戒処分取消等請求事件
最高裁判所第三小法廷判決(破棄差戻)
原審名古屋高裁金沢支部
(判例時報2551号5頁)
(裁判所HP裁判例検索)
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/232/091232_hanrei.pdf