【破産事件:地方公務員共済組合が事務組合を通じて組合員の破産宣告後の自由財産である退職金から貸金の弁済を受けようとした事件】

1 ポイントは何か?

  破産者の経済的更生と生活保障

  破産財団を形成する財産

  破産債権

  自由財産

  自由財産による破産債権の任意の弁済

2 何があったか?

  地方自治体Dの地方公務員Aは破産宣告を受けた後Dを退職したが、事務組合Bが、Aが破産宣告時にDを退職していたとすれば支払われたであろう退職金額の4分の1であるα円を破産管財人Cに支払い、かつ、Aの同意なくAの貸金債権者(地方公務員共済組合)Eに貸金残金β円を支払った。     

AがEに対してβ円の不当利得返還請求を行った。

3 裁判所は何を認めたか?

  A勝訴。

  破産財団が破産宣告時の財産に固定され、破産債権は破産手続に寄らなければ行使できないのは、破産者の経済的更生と生活保障を図ったものである。

ただし、破産者が自由財産から破産債権を任意に弁済することは妨げられない。

地方公務員等共済組合法115条の弁済方法は、弁済の代行に過ぎない(最高裁昭和62年(オ)第1083号平成2年7月19日第一小法廷判決・民集44巻5号837頁参照)。

任意の弁済であるというためには、破産宣告を受けた組合員が自由財産から破産債権に対する弁済を強制されるものではないことを認識し、その自由な判断により同条の弁済方法をもって貸金債務を弁済したものということができることが必要であると解すべきである。

 

4 コメント

  妥当。

  

 

参考 現行の破産法34条(破産財団の範囲)42条(他の手続の失効)

破産法 | e-Gov法令検索

旧破産法(平成16 年法律第75号による廃止前のもの)は、国会図書館のHPからダウンロードできる。

地方公務員等共済組合法115条2項

地方公務員等共済組合法 | e-Gov法令検索 

平成17(受)1344  不当利得返還請求事件
平成18年1月23日最高裁判所第二小法廷判決(棄却)  原審 高松高等裁判所

(裁判所HP裁判例検索より)