【労働事件:うつ病休職後解雇された事件】

1 ポイントは何か?

  安全配慮義務違反

  過失相殺

  素因減額

  傷病手当金

  休業補償金

2 何があったか?

  AはBの従業員であるが、うつ病になり休職し、休職期間満了後に解雇された。

  Aはうつ病が労働災害であり、解雇無効を主張し、安全配慮義務違反の債務不履行又は不法行為による休業損害または未払賃金及び規定に基づく見舞金を請求した。

3 裁判所は何を認めたか?

 ⑴ 原審東京高等裁判所は安全配慮義務違反の損害賠償を認め過失相殺、素因減額、健康保険法99条1項に基づく傷病手当金の保有額の控除により減額した。

 ⑵ 最高裁判所は3つの減額理由を不相当とし、傷病手当金は業務外のもので不当利得として健康保険組合に返還すべきものであり、将来の休業補償金を控除することもできないとした。

4 コメント

  使用者は、勤務について決定権のない労働者を保護すべきである。

(引用条文・判例)

○民法418条又は722条2項 の規定の適用ないし類推適用による過失相殺。

○同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範 囲を外れるぜい弱性などの特性等を有していたことをうかがわせるに足りる事情がない(最高裁平成10年(オ)第217号,第218号同1 2年3月24日第二小法廷判決・民集54巻3号1155頁参照)。

○本件傷病手当金等は,業務外の事由による 疾病等に関する保険給付として支給されるものである(健康保険法1条,55 条1項)。

○原審は,上記請求について,上記損害賠償の額からいまだ支給決定を受けていない休業補償給付の額を控除しているが,いまだ現実の支給がされていない以上,これを控除することはできない(最高裁昭和50年(オ)第621号同52年 10月25日第三小法廷判決・民集31巻6号836頁参照)。

判例

平成23(受)1259  解雇無効確認等請求事件
平成26年3月24日 最高裁判所第二小法廷 判決

(上告人の損害賠償・見舞金請求敗訴部分破棄差戻し、その余の上告棄却、棄却部分の上告費用は上告人負担)

原審 東京高等裁判所

集民(最高裁判所裁判集民事編) 第246号89頁 

裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

084051_hanrei.pdf (courts.go.jp)

会社とのトラブルでお悩みの方

残業代の未払いやトラブルに直面している方、未払い残業代に関する疑問や不安をお持ちの方、退職、休業、解雇といったトラブル時の時間外労働に関する証拠集めや、法的に正しい残業代を請求する方法、請求できる残業代を正確に計算するアドバイス、さらには会社との交渉のサポートも川崎市の恵崎法律事務所にご相談ください。あなたの権利を守りましょう。