1 ポイントは何か?
就労証明書の作成義務の有無
会社の倒産の危機
会社役員の体調不良
労働組合役員等の交渉態度
脅迫、強要
2 なにがあったか?
労働組合の執行役員A及び同Hと組合員Bが、他の多数の組合員とともにE社に押しかけ、役員FにGの就労証明書の作成を求め、FはGの就労証明書がなくても子の保育園継続利用は可能でE社はまもなく倒産し、Fは高血圧緊急症により体調不良であると作成を拒否したところ、それでもAらは執拗に作成を求め、怒号した行為について、Fが脅迫、強要等で刑事告訴した。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 第1審地方裁判所
E社にはGの就労証明書を作成する義務はなく、AとBの強要未遂罪の共同正犯が成立するとし、A懲役1年、B同8月、いずれも執行猶予3年。
⑵ 原審 大阪高等裁判所
E社にはGの就労証明書を作成する義務があり(第1審の事実誤認)、AはHがFに怒号した件について脅迫罪の共同正犯として罰金30万円、Bは無罪とした。
⑶ 最高裁判所
E社にはGの就労証明書を作成する義務があっても強要罪は成立しうるとして、原審判決破棄、原審大阪高等裁判所へ差戻した。
4 コメント
E社が倒産の危機に瀕し、従業員も労働組合に結集し交渉するさなかに発生した事件であろう。労働組合の交渉態度にも問題があるが、Fが就労証明書の作成を拒否した理由がわからない。誠意が欠けていたのではないか。
判例
令和4(あ)125 被告人Aに対する脅迫、被告人Bに対する強要未遂被告事件
令和5年9月11日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻