1 ポイントは何か?
裁判官に職務違反、怠慢ないし品位を辱める行状等があった場合(裁判所法49条)、戒告又は1万円以下の過料の懲戒を受ける(裁判官分限法2条)。本件判決は、高等裁判所裁判官がウェブ上で犯罪被害者の遺族を侮辱するなど、品位を辱める行状があり、戒告となった事例である。
2 何があったか?
高等裁判所裁判官Aは、令和元年11月12日、フェイスブック上で、犯罪被害者の遺族が東京高裁事務局及び毎日新聞に洗脳されてAを裁判官訴追委員会に訴追請求している旨の表現を用いて同遺族を侮辱した。
3 裁判所は何を認めたか?
Aを戒告した。
「裁判の公正、中立は、裁判ないしは裁判所に対する国民の信頼の基礎を成すものであり、裁判官は、公正、中立な審判者として裁判を行うことを職責とする 者である。したがって、裁判官は、職務を遂行するに際してはもとより、職務を離れた私人としての生活においても、その職責と相いれないような行為をしてはならず、また、裁判所や裁判官に対する国民の信頼を傷つけることのないように、慎重に行動すべき義務を負っているものというべきである(最高裁平成13年(分)第3号同年3月30日大法廷決定・裁判集民事201号737頁参照)。」
「裁判所法49条が懲戒事由として定める「品位を辱める行状」とは、職 務上の行為であると、純然たる私的行為であるとを問わず、およそ裁判官に対する 国民の信頼を損ね、又は裁判の公正を疑わせるような言動をいうものと解するのが 相当である(前掲最高裁平成30年10月17日大法廷決定)」
4 コメント
裁判官の職務上の義務と表現の自由の問題である。
判例
令和2(分)1 裁判官に対する懲戒申立て事件
令和2年8月26日 最高裁判所大法廷