【刑事事件:裁判所が被疑者に被害者の氏名等を秘匿する勾留状を交付した事件】

令和6(し)262  勾留の裁判に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
令和6年4月24日  最高裁判所第三小法廷  決定  棄却  神戸地方裁判所


1 ポイントは何か?


わいせつ事件等の被害者の氏名等を秘匿した勾留状の交付は有効か。


2 何があったか?


Aは犯罪者として逮捕され、検察官の請求によってB地方裁判所が勾留を決定
したが、Aが交付を受けた勾留状には被害者を特定する氏名等の記載がなかっ
た。Aは、わいせつ事件等の被害者の氏名等の秘匿を認める刑事訴訟法207
条の規定は事件の特定を欠き、弁護人の選任をも妨害するから憲法34条に違
反すると主張した。


3 裁判所は何を認めたか?


最高裁判所は、被害者の特定がなくても被疑事件の事実の特定は可能であり、
弁護人の選任を妨害しないとして憲法違反の手続きとは認めなかった。


4 コメント


裁判所が勾留決定をした時は、不服申立の方法として準抗告ができる(刑事訴
訟法429条)。わいせつ事件等の被害者の氏名等の秘匿は、他の方法で事件
が特定されていれば準抗告の理由とはならない。
残された問題として、住居侵入事件で、どの家に入ったのかがわからない等の
場合に事件の特定がされていないという場合もあるのではないか。

以上