1 ポイントは何か?
当事者間で、事後には一切の要求をしない旨の示談が成立した場合、一般的には事後の請求はできない。しかし、事後に示談の時には全く予想外の損害が生じていることが判明した場合には追加の損害賠償請求ができるとした事例である。
2 何があったか?
Dは、昭和32年、左前腕骨複雑骨折の障害を受け、事故直後の医師の診断では全治15週間であり、Dも比較的軽微な負傷で、治療代も自動車損害賠償保険金で賄えると考えて、事故後10日程度で入院中に上告人会社から自動車損害賠償保険金10万円を受け取って今後一切請求しないとの示談を成立させた。
ところが、事故から1か月以上経過後に予想外の重篤な症状であることがわかり再手術を余儀なくされ、左前腕関節の用を廃する程度の機能障害が残り、77万円の損害を被った。
Dが上告会社に対し損害金残金の請求をした。
3 裁判所は何を認めたか?
D勝訴。
「全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に小額の賠償金をもつて満足する旨の示談がされた場合においては、示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであって、その当時予想できなかった不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない」
4 コメント
確定的な先例である。
判例
昭和40(オ)347 損害賠償請求
昭和43年3月15日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却
大阪高等裁判所
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