【刑事事件:違法ドラッグを使用し興奮した状況で、両親を突発的に殺害した事件】

1 ポイントは何か?

  心神喪失状態で犯した犯罪は無罪となる(刑法39条1項)。本件は、被告人が酒と共に危険ドラッグを飲み、父親に注意され、突発的に父母を殺害したが、心神喪失の状態にはなかったとして有罪とされた事件である。また、違法薬物の所持については薬事法違反とされた。

2 何があったか?

  Aは、平成20年頃から危険ドラッグを使用していた。平成26年10月15日、自室で酒を飲みながら危険ドラッグに指定されているジフェニジン等を服用した。そして、夕食時に父親から注意されたあと、興奮し、突発的に両親を包丁で殺害した。

  検察官は、Aを2件の殺人罪及び薬事法違反で起訴した。

  弁護人は、Aが危険ドラッグの影響で心神喪失となり両親を殺害したと主張し、また、薬物の所持については、違法薬物であることの認識がなかったと主張し、いずれも無罪であると主張した。

3 裁判所は何を認めたか?

  Aは懲役28年の刑に処せられた。

  Aの本件犯行前後の行動から、本件犯行当時、自己制御能力は失われていなかったと認定し、薬事法違反についても、指定薬物であることの認識があったと認定した。

4 コメント

本件では、Aが危険ドラッグを常用していた期間がほぼ6年に及ぶことを考えると、Aにはその薬効が危険なものであることを理解できており、そのような危険ドラッグの服用は、自ら心神喪失状態を招く行為であり、いわゆる「原因において自由な行為」として、犯行時は仮に心神喪失であったとしても有罪は免れないということも考えられる。

インターネットで簡単に危険ドラッグを購入できること、危険ドラッグに指定されるとその指定を回避するドラッグが合成されて売られる、いたちごっこの状況にあることを考えると、認可を受けた薬物のみをインターネットで販売できるようにする認可制を導入するとか、インターネットで薬物を購入する場合は必ず医師の処方箋を必要とするなどの規制が必要ではないか。

判例

平成27(わ)281  殺人,薬事法違反被告事件
平成27年11月16日  横浜地方裁判所

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