【労働災害事件:水道局の職員が自殺した事件】

1 ポイントは何か?

  N市水道局の職員が遺書を残して飛び降り自殺をした。その妻子らが、同職員の自殺は職場の上司らのいじめによるものであると主張して労災請求をし、それが認められたうえでN市に対し損害賠償請求をした。裁判所は、いじめの存在を認定し、過失割合を5割とし、労災補償給付金等を控除した残額の損害賠償義務を認めた。

2 何があったか?

  Dは平成2年4月、N市水道局の職員として採用された。しかし、平成19年5月8日、上司のいじめにあったという遺書を残して飛び降り自殺をした。Dの遺族である妻A及び子B、CらがDの相続人として公務災害の認定申請をしたところ認められ、葬祭補償、遺族補償年金給付が支払われ、共済組合の遺族共済年金も支払われた。Aらの代理人からN市に対し損害賠償請求と和解の申入れをしたがN市が応じなかったため、AらがN市を相手に訴訟を提起した。

3 裁判所は何を認めたか?

  Aら勝訴。

  N市の安全配慮義務、水道局の業務体制、Dが処理を指示された業務の内容、その困難性、各上司の性格、対応、発言等、安全配慮義務違反と自殺の相当因果関係、損害の内容、損害額など詳細に検討したうえで安全配慮義務違反を認定し、亡Dの対応状況を考慮して過失割合を5割とし、公務災害の葬祭補償は葬儀費用との関係で、また遺族補償年金、共済組合の遺族共済年金は逸失利益との関係で損益相殺し(超過分が、他の損害項目に回されることはない。)、その残額について賠償義務を認めた。

4 コメント

  本件では過失割合5割が妥当か、また一般的に安全配慮義務違反の債務不履行責任ないし不法行為責任に基づく損害賠償額の算定で公務災害給付や共済給付で損益相殺することは当然妥当なのか、気になるところである。

判例

平成27(ワ)394  損害賠償等請求事件
令和4年11月24日  新潟地方裁判所

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