【刑事事件:覚せい剤譲渡契約を締結し、代金を受け取り、品物を郵送したが届かなかった事件】

1 ポイントは何か?

  刑の種類には死刑、懲役、禁固、罰金、拘留、科料などの主刑と、付加刑としての没収がある(刑法9条)。没収は、犯罪に関係する物やその対価を被告人から取り上げることで(同19条)、物や対価を没収できない時は価額を追徴する(同19条の2)。本件は覚せい剤の密売の事件であるが、約束した覚せい剤の代金全額を受け取っていたが覚せい剤を渡そうとして渡せなかった場合に代金相当額を追徴できるのかが問題になり、最高裁判所はできると認めた。

2 何があったか?

  覚せい剤の密売人が、約束した代金を全額、銀行振込で受け取り、品物は一部郵送したが届かなかった。

3 裁判所は何を認めたか?

  最高裁判所は、振り込まれた代金全額について追徴すべきとした。

  「本件譲渡未遂を原因として得た財産といえるから,麻薬特例法(*)2条3項 にいう「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」として薬物犯罪収益に該当する」

  *平成3年法律第94号

国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律 | e-Gov法令検索

  

4 コメント

  覚せい剤の譲渡契約を締結したが、代金を受け取っただけで、覚せい剤そのものの譲渡に全く着手していなかった場合は、覚せい剤譲渡未遂罪も成立しないので、受け取った代金は没収ないし追徴の対象とはならないだろう。別途詐欺罪等が成立する場合は別である。

判例

平成30(あ)437  覚せい剤取締法違反被告事件
令和元年12月20日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  名古屋高等裁判所  金沢支部

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