1 ポイントは何か?
⑴ 破産管財人による否認権行使の要件
⑵ 支払不能に陥ったのちの弁済であるか、また、支払を受けた相手は、そのことを知っていたか(悪意であったか)。
⑶ 遅延損害金
2 何があったか?
⑴ Aから債務整理を受任された弁護士は、平成26年10月17日、債権者らに対して受任通知を行った。
⑵ Aは、平成28年10月13日、銀行Yに対して、金436,350円を支払った。
⑶ Aは、平成30年12月27日、札幌地裁に破産手続きの開始を申立、令和元年12月25日、破産宣告を受け、破産管財人Xが選任された。
⑷ Xが、Yに対して、破産法160条に基づいて否認権を行使し、金436,350円を返還するよう求めて訴えを提起した。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 裁判所は、Aが、平成28年10月13日の時点で、すでに客観的に支払い不能の状態すなわち、一般的、継続的に弁済することができる資力があるとは言えない状況に陥っていたことを認めた。
⑵ Yがそのことを認識していた(悪意である)ことも認めた。
⑶ Yは、破産申し立てから1年以上前に受けた弁済であることを理由として、破産法166条(支払の停止から1年経過後の否認権行使を制限する規定)の支払不能の場合のへんぱ弁済への類推適用を主張したが、裁判所は認めなかった。
⑷ Xの請求では遅延損害金の利率が明示されていなかったが、法廷利率(商事利率年6%)を適用した。
4 コメント
破産管財人には、否認権を行使し、一般債権者を平等に保護する責任があります。
(破産法)破産法 | e-Gov法令検索
以上
札幌地裁令和3年7月15日判決
(裁判所、裁判例検索)091283_hanrei.pdf (courts.go.jp)