賃金請求権の発生
あなたが企業の従業員として働いておられるなら、その企業に就職するとき、労働契約書あるいは雇用契約書を作成したと思います。これは一方が使用者として賃金を支払い、他方が労働者として労働を提供するということを約束したものです。労働契約ないし雇用契約の内容については、当事者間の対等な交渉に基づいてお互いに自由な意思で決めたことになっています。しかし、労働者は、使用者の指揮命令に基づいて労働を提供するので社会的には弱い立場にあるとみなされ、労働契約法、労働基準法、最低賃金法などの法律のサポートを受けてその内容が定まります。
賃金とは
賃金は、名目のいかんにかかわらず、労働の対価として支払われるものをいいます。次のようなものがこれに入ります。
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- 定期賃金
- 退職金 (労使間において、あらかじめ支給条件が明確に定められ、その支給が法律上使用者の義務とされているもの)
- 一時金(賞与・ボーナス)
- 休業手当
- 残業手当
- 年次有給休暇の賃金
賃金の額について
最低賃金法に基づいて賃金の最低額が定められています。
賃金の支払い方法について
労働基準法第24条は、賃金の支払い方法について、
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- 通貨で
- 直接労働者に
- その全額を
- 毎月1回以上
- 一定期日を定めて
支払う義務があると定めています。
未払い残業代が発生するケース
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- 残業をしなければ成り立たない業務状況であるにも関わらず、残業代が未払い。
- みなし残業代を払っていると言って残業代を払わない
- 仕事の能力が低いことを理由に残業代を払わない
未払い残業代を請求するための証拠
原則として、労働者が1日8時間、1週間40時間を超える時間外労働の証拠を提示して立証する責任があります。
例えば、タイムカードのコピー、出勤・退勤時刻がわかる日報などが時間外労働の証拠となります。また、労働契約については、労働契約書や就業規則などを証拠として用意する必要があります。
証拠については、会社に業務記録、就業規則、労働契約書等を開示してもらうか、裁判所を通じて確保することになります。詳しくは、弁護士にご相談ください。
未払い残業代の請求の手段
- 口頭での請求
「給料日を過ぎました。給料を払って下さい。」
「残業代が足りません。私の計算だと・・となりますよ。」
など。
- 文書で請求
内容証明郵便で未払い賃金を請求。ここから弁護士に依頼することもできます。
使用者に内容証明郵便を送り、未払い賃金を請求します。使用者が交渉に応じ、話し合いで解決できる場合は、示談書を作成し解決します。
- 地方自治体や弁護士会などのADRの利用、労働組合の団体交渉権の利用
- 労働審判
使用者との話し合いで解決できない場合は、裁判所に対し、労働審判法に基づく労働審判を起こします。
労働審判は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名からなる労働審判委員会が原則として3回以内の期日で、審理します。可能な限り話し合いによって解決をはかる制度です。
審判に納得できない場合は、2週間の不変期間内に異議申し立てをすることができます。有効な異議申し立てがあった場合は、審判は効力を失い、裁判の提起があった者とみなされます。
- 裁判
民事訴訟法の手続きに基づいて審理が勧められます。
どこに相談すればいいか?
- 労働基準監督署
労働監督局は、企業が労働に関する法を遵守しているかどうかを監視する行政機関です。
- 法テラス、弁護士会、地方自治体の労働相談窓口、労働組合など。
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- 法テラス(日本司法支援センター)は、弁護士を紹介し、弁護士費用を立て替えます。
- 弁護士会は、弁護士の団体であり、ADRを開催したち、弁護士を紹介したりします。
- 地方自治体は無料相談窓口を持ち、都道府県はADRを持っています。
- 労働組合は、組合員の使用者に対し、団体交渉権を持っています。
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- 弁護士
未払い賃金の支払いを求める書面(内容証明郵便)を作成したり、依頼者に代わって会社と交渉したり、必要であれば法的措置をとるなど、賃金の支払いを促すためのさまざまなアクションをとることができます。
弁護士に依頼するメリット
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- 法的な知識をもとに、さまざまな効果的な解決策を提案
- 依頼者の側に立ち、問題解決に努めます
- 交渉や様々な手続きを代理で行ってくれるため、心理的な安心感が大きい。
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