不当解雇とは
不当解雇とは、正当な理由がない解雇を言います。労働契約の条項に反する解雇、労働基準法などの法律の条項に違反する解雇、全く合理的な理由がない解雇については、解雇無効を主張することができます。 なお、退職届を出したが、間違いだったという場合に、退職届を取り消すことができる場合もあるでしょう。
解雇が無効となるケース
- 外国人という理由で辞めさせられた。
- 理由を告げず、突然、明日から来なくていいと言われた。
- 労災事故で怪我をして入院したら、もう会社を辞めてくれと言われた。
- 会社に都合の悪い人間であり、気に食わないからやめさせると言われた。
- 女性はもういらないから、明日から来なくていいよと言われた。
解雇の種類 【普通解雇・整理解雇・懲戒解雇】
普通解雇
普通解雇とは、会社の都合による解雇です。解雇予告手当や一定の補償金が支給されることもあります。労働者の退職と区別されます。普通解雇の理由には、職務遂行能が無い、勤務態度が悪い、けがや病気で働けない、業務命令に違反したなどがあります。
整理解雇
整理解雇とは、会社の業績が悪化し事業継続が困難な場合に、企業が経営上の理由で従業員の数を減らす必要がある場合に行う解雇のことをいいます。
原則以下の4つの要件を満たす必要があります。
① 人員削減の必要性
人員削減は、不況や業績不振など、経営上の十分な必要性に基づくものでなければなりません。
② 解雇回避の努力
希望退職の募集等、解雇を回避するための努力がなされていること。
③ 人選の合理性
解雇のための人選基準は、客観的かつ合理的で、公正な運用がなされている必要があります。
④ 解雇手続きの妥当性
労働組合や労働者に対して、解雇の必要性、時期、規模、方法等について、十分な説明を行い、理解を得ることができること。
懲戒解雇
懲戒解雇とは、解雇の中でも最も厳しい措置で、労働者が重大な規則違反や会社の秩序を乱すような非行があった場合に制裁として解雇することです。
例えば、横領や傷害などの犯罪行為や、人を傷つけるなど会社の名誉や信用を損なう行為をした場合に、懲戒解雇が行われることがあります。
雇用者のそれまでの功績などを考慮し、懲戒解雇よりも軽い処分として行われる解雇に、諭旨解雇があります。懲戒解雇とは異なり、手当てや退職金が支払われるというケースもあります。
不当解雇の解決までの流れ
1.会社との交渉
相手企業との交渉をします。内容証明郵便を送り、こちらの要求や主張を相手企業に伝えます。内容証明郵便の送付後、解決に向けた交渉が行われます。弁護士が相手方との間に入り、迅速な解決を目指します。
2.労働審判
相手企業との話し合いで解決できない場合は、裁判所に対し、労働審判を起こします。
裁判では、労働紛争の審理に1年以上かかることも珍しくありません。それに対して労働審判は労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名からなる労働審判委員会が原則として3回以内の期日で、審理し、数ヶ月で終了するケースも少なくありません。
審判に納得できない場合は、2週間の不変期間内に異議申し立てをすることができます。有効な異議申し立てがあった場合は、審判は効力を失い、裁判の提起があったものとみなされます。
3.訴訟
労働審判で和解が成立しなかったり、異議申し立てがあった場合は、訴訟に移行します。
不当解雇をされたらどこに相談するか
行政の労働相談窓口
ADRが開かれる場合もあります。ADRとは裁判外紛争解決手続きの略で、あっせん、調停、仲裁などがあります。ADRは、手続きが簡単、解決までの時間が短い、経済的、非公開という特徴があげられます。
労働組合の相談窓口
労働組合に加入し、労働組合から使用者に対して団体交渉を求めることができます。団体交渉権とは、労働組合に保障されている権利で、労働条件などについて会社と交渉できる権利です。
労働委員会の相談窓口
個人で救済を申し立てることもできます。
裁判所の相談窓口
個人で調停や労働審判などを申し立てることもできます。
弁護士会、日本司法支援センター(法テラス)、弁護士
弁護士に依頼してさまざまな法的な申し立て手続をとり、解雇無効の確認請求、職場復帰の請求、給与の支払請求、損害賠償や慰謝料支払請求などを求めることになります。裁判手続きにおいても、和解解決することもあります。一定の条件で、退職を受け入れる場合もありえます。
不当解雇の主張はいつまでにすべきか
無職のままでいるわけにはいきませんから、職場復帰の請求はすぐやるべきです。再就職したら、元の職場復帰は難しくなりますから、未払賃金、解雇予告手当、損害賠償請求だけの請求になるでしょう。それには5年ないし2年の消滅時効がありますから、長く放置することはできません。
まずはお気軽にご連絡ください。
判例要約
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【労働問題:消防署員が部下に対するパワハラ等で懲戒免職処分や戒告処分を受けた事例】
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【地方公務員懲戒事件:地方公務員が飲酒運転をして軽微な物損事故を起こした事件】
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【労働基準法:待機時間の賃金を請求した事例】
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【懲戒処分:氷見市長が消防職員を停職の懲戒処分にした事件】
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【懲戒事件:バスの運転手が懲戒免職になった事件(京都)】
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【懲戒処分:水族館を経営する株式会社の課長代理2名が女性従業員らに対するセクハラで出勤停止の懲戒処分を受け、降格された事件】
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【労働災害:村の職員が、うつ病になった事例】
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【労働事件、破産事件:破産管財人が、破産した労働者と元勤務先会社の間の退職金及び未払い給与の相殺合意ないし天引き依頼に対し否認権を行使できるかが問題となった事件】
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【労働組合:使用者が、労働委員会の救済命令を争った事件】
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【消防士が自死し、遺族が公務災害認定を求め、かつ、国家賠償請求訴訟を提起し、同裁判中に、公務災害支部審査会の口頭意見陳述の記録の開示を求めた事件】
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【労災:従業員が、解離性大動脈瘤を原因とする急性心筋梗塞により死亡した事例】
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【懲戒解雇無効:旅費等不正受給100回の事例】
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【労働事件:鳴門市の公営企業である競艇場の共済会が臨時従事員の離職の際に離職餞別金を支払っていたが、市が共済会にそのために交付していた補助金が違法だとされた事件】
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【労働事件:建材卸業者の配送に30年間従事していた運送業者が石綿被爆で死亡した事件】
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【労働災害事件:O百貨店の料理長が自殺した事件】
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【労働災害:じん肺法上の管理区分3のじん肺・肺結核と原発性肺がんの因果関係の確証がないとされ労働災害と認められなかった事件】
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【懲戒解雇:勤続30年の公立学校教員が酒気帯び運転で懲戒免職、退職手当不支給となった事件】
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【労働刑事事件:労働組合が会社に従業員の就労証明書の作成を求め怒号に及んだ事件】
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【労働災害:調理師が長時間労働をし、脳出血により死亡した事例】
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【労災:職場の「カースト」的パワハラ・いじめ事件】
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【労働事件:支店長の未払残業代、付加金請求等が認められた事件】
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【労働: 看護師が緊急出動のためのスタンバイの時間の割増賃金を請求した事件】
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【労働契約: 固定残業代を超える残業手当の請求が認められた事件】
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【労働事件:建材卸業者の配送に30年間従事していた運送業者が石綿被爆で死亡した事件】